ビジネスモデリングツールとは、文字通り「ビジネスをモデル化」するためのツールです。
それでは、ビジネスをモデル化するツールとは、どのようなものでしょうか。
ビジネスをモデル化するツールでは、モデルの表記法が大きな比重を占め、この表記法によって多くが決定されます。
そこで、ここではまずビジネスをモデル化するための表記法が備えるべき要件を整理してみましょう。
ビジネスのモデル化をはかる際は、「誰が」「いつ」「何を」「どのように」「どれだけの売上・収益を」「どれだけのコストで」など、その5W2H+αを可能な限り幅広く表現することが求められます。
この場合、ビジネスにおける5W2H+αとは以下の表にあるようなものです。
ビジネスモデルの表記法において、以下の表にあるビジネスファクターの表現ができない場合は、ビジネスモデリングの表記法として何らかの不足、或いは偏りがあると考えるべきでしょう。
視点 | ビジネス表現上のキーワードの例 |
---|---|
WHAT(何を) | 商品・製品、サービス、部品、原材料、各種の対象物・モノ、データ、概念 |
WHY(なぜ) | 作業の目的、事業戦略、経営戦略、経営理念 |
WHEN(いつ) | 計画、スケジュール、開始時間・開始タイミング、終了期限・時限 |
WHO(誰が) | 組織、職位、顧客、仕入先、外部関係者、情報システム、ロボット、自動化機器 |
WHERE (どこで) |
(組織、拠点、地域、販売チャネル、店舗) |
HOW (どのように) |
処理手順、処理プロセス、遂行手段、販売チャネル |
HOW MUCH (いくらで) |
売上、利益、コスト、所要時間、人員数 |
その他(+α) | ビジネスリスク など |
モデル表記された成果物は、経営者を含め、ビジネスの現場にいる全ての従業員や関係者が理解できるものである必要があります。これは、電気技術者が理解できない電気回路図は意味がないという事と同じです。
一方で、モデリングの専門家でない通常のビジネス関係者は、難解なモデリング表記法を理解しようとはしないのが通例であって、したがって、ビジネスモデリングの表記法は可能な限り初見で直感的に理解できるような分かりやすさを持つことが重要になります。
およそモデル化をはかる全ての対象物には静的側面と動的側面があり、そのモデル化をはかる場合も、対象物の静的側面に着目した静的モデルと、動的側面に着目した動的モデルが存在します。
建築模型、自動車のクレイモデルなどは静的モデル、天体運行を表す数式モデルや各種のシミュレーターなどは、対象物の動的側面を表す動的モデルです。
ビジネスを静的側面、動的側面に考え分けるなら、組織図、期末財務諸表が静的モデル、業務フローチャートが動的モデルの例となります。
もしビジネスを総合的な視点で捉えようとするなら、静的側面、動的側面のいずれかのみに着目するのではなく、その両面を表現する方法論が必要になります。
フローチャートやBPMN(後述)など、ビジネスをモデル化する手法の多くが、プロセスやフローのみをモデル化する手法に止まっていますが、これらビジネスの動的側面のみに着目したモデルは、ビジネスの一側面を表現しているにすぎません。このようなアプローチは、対象物の構造を考慮せず、その動きのみに着目しているという意味で、「車の構造を知らずに車を運転している」「海図を持たずに航海している」ような危うさがある点に留意が必要です。
特に、大規模・広域的な領域をモデル化する場合は、静的モデルが重要になります。課内の承認フローなど局所的な領域をモデル化する場合は、フローチャート等の動的モデルで十分な場合が多くありますが、企業全体、あるいは企業グループ全体、部門全体など、ある程度以上のサイズもった領域をモデル化する場合は、静的モデルが欠かせません。これは全体の構造や関係、登場するプレイヤーを整理し図式化するために、静的モデルが重要な意味をもつためです。
通常、ビジネスをモデル化しようとする場合、その目的の多くはBPR(Business Process Re-engineering)にあります。したがって、ビジネスモデリングの表記法やプラットフォームもBPRプロジェクトの支援機能を包含することが望まれます。
この場合、BPRプロジェクトの支援機能とは、ビジネスプロセスを的確に表現することなどは当然のこととして、これ以外には以下のような機能が該当します。